シニア女子は横井ゆは菜選手(中京大学)が、ショート2位から逆転優勝を果たしました。
フリーは去年と同様、「オペラ座の怪人」。衣装は黒と赤を基調とした去年とは違い、今年は柔らかなピンクです。
ヒロインのクリスティーヌの目線でプログラムが進んでいきます。
トリプルフリップとトリプルサルコウ+トリプルトゥループでステップアウト。それ以外は完ぺき。TESは70.25でトータルスコアは131.29.1位に躍り出ました。
同じプログラムながらも、違う視点で演じ切った横井選手。フリーが終わってからは、落ち着いた様子で次のように語りました。
―演技を終えてみて?
横井オペラ座の地下に恐れながらも好奇心で入ってみた少女のイメージで。そういう物語ではなかったかと思うんですけど、なんとなくそういうイメージで演じさせて頂きました」
―振付変わりました?
横井「はい、結構。後半はジャンプが重なるので、変えることはできなかったんですが、ステップとコレオと最初の出だしはかっこいい出だしだったので、そこを変えることで昨シーズンと違うものになるかなと。あっこ(鈴木明子)さんには最初、もうちょっと違うものをよろしくお願いしますと連絡したりして、考えて下さいました」
―クリスティーヌよりで演じてみていかがですか?
横井「ショートは強い女性、悪女というイメージでやったんですけど、それとはまったく違う感じです」
―シニアデビューのスタートについて。
横井「全体を通して、大きなミスにはつながらなかったので、そこは自信にしてよかったのかなと思う。小さなほころびが出たので、練習して。少しもすきのないプログラムにしたいと思います。ショートの時も思ったんですが、失敗しても今回、130点頂けたので、それは日ごろの練習が評価して頂けたのかなと思ったので。試合を重ねるごとに練習の大切さがわかってきているので。自分にとっては毎試合、いいものになっています」
―これから海外試合も始まりますが、それに向けてはどういう風に修正したい?
横井「国内大会では緊張しているんですけど、心ではどこかいい緊張で持っていけていると思うんですけど、やっぱり国際大会となると、違った日本と違った雰囲気なんで。私は飲まれてしまうと弱いので。飲まれないようにするために練習を頑張ります」
―去年にひっぱられることはない?
横井「見ている方からはしたらひっぱられているかもしれないですけど、一応意識して、去年と違ったものを常に意識して頑張っています」
―朝、(妹の)きな結選手がアクセル決めて刺激になった?
横井「うーん、刺激というより、きびしいかもしれませんけど、“何やっているんだよ、他のところ!”って思いました。それは母も妹に言っていると思うんですけど、妹はアクセルを2回、試合で決めることができているので、私もその分、期待している部分があって。だからこそ、もうちょっとこうやればいいのにっていうのを妹にきつく言ったりして。でも妹は無視みたいな感じなんですけど、きっとこの試合でまとめないと点数がでないと妹もわかったと思いますし、これからの練習に私は期待していますし、どっちかが良くてどっちかがダメっていうのは気持ちの良いものではないので、どっちもいい結果が出せたらいいなと思うので。お互いに私のいいところというか、見習うべきところは見習って。私も妹にもっとよくなるようにアドバイスしたいですし、アクセルに関しては妹のほうがすでに習得しているので、アクセルは頑張って見て、盗みたいなと思います」
同じ競技者として妹から刺激を受けているようです。
坂本花織選手(シスメックス)のフリーはブノワ・リショーさん振り付けの『マトリックス』。つなぎが濃密で、動きも激しく休んでいるひまがないほどハードなプログラムです。
ショート6位から追い上げ、2位に入りました。フリー後、息を切らせながら、囲み取材に応じました。
―ずっと激しく体を動かしていたプログラム。かなりこのプログラムは体力の必要性はある?
坂本「振付するときからパート事に3つにわけてずっとやっていた。パート事でもしっかりやりこんで、できるようになったら余裕でできるようになったら、しっかりいいようになると思うので。そうするには体力はまだ足りないので。明日からの合宿でしっかり鍛え上げたい」
―今回のプログラム、ジャンプでアピールするところがあった。それこそ難しさがあるんじゃないかなと思うんですが。
坂本「本来はそうなんですが、今日はあそこまでショートを失敗してしまったので。きれいにまとめるしかないと無心になってやったので。全然、一回もジャッジは見られなかったです」
―シニア合宿でも目線の使い方や表情が難しいとおっしゃっていましたが。どのポイントが難しい。
坂本「ショートもフリーもかっこいい系で表情も一緒の部分はあるかと思うんですが、ショートとの違い、区別をしっかり。フリーでは微笑むというかきりっとした目線を送れるようにしようと思っています」
ー悔しい演技という話もありましたが、その中でも例年よりもこういうところがレベルアップできているのかなという手ごたえは?
坂本「去年までは直前までアイスショーがあったりして、そのアイスショーでもショート、フリー披露してもボロボロだったりしていたんですが、今年はアイスショーでもノーミスでできたので。アイスショーもきっちり試合に向けて練習ができたんじゃないかなと思うので。そこは去年よりも成長できた部分だと思います」
―女スパイということで、斬新な黒レザーの衣装ですが。
坂本「久々の長袖の衣装で(息を整え)やりにくいです」
―暑さは大丈夫?
<坂本「いまは死にそうなんです。氷の上にいるのに、めっちゃ、熱中症になりそうです」
―マトリックスの背中をそるポーズの迫力は出ていたかと思いますが、手ごたえはどうですか?
坂本「本当はもっと反りたかったんですけど、30%ぐらいしか反らなかったので。あそこで100%反っていたら、完ぺきにこけていたので。今日はセーブしてしまったので、次の試合からは100%マトリックスにしたいです」
笑顔で取材に応じながらも、途中で「暑い…」と汗をぬぐう場面もありました。
3位の白岩優奈選手(関西大学KFSC)のフリーは映画「AMEN」。ショートの後の会見で、「(フリーのテーマは)とらわれている自分を解放したい」と語っていました。
体調が万全ではなかったようです。
2回目のトリプルルッツで転倒。ダブルアクセル&トゥループがセカンドジャンプでダブルになるミスがあり、フリーでは3位に。
フリーを終え、率直な感想を聞かれると、
「ひとつは言い訳になるんですけど、やはり微熱があって、ベストな状態に持っていけなかったんです。試合に合わせて体調を合わせなきゃいけないというのが、新しい課題だったので(ちょっと息苦しそうにでも笑顔で)、あとは次の試合に向けて体調を万全にして。試合ができるような状態にできたらいいなと思います」
と語った表情は、ややしんどそうでした。
―ステップは今まで以上に上下に動く感じですが、やってみてどうですか?
白岩「えっと、練習からすごく最後の方なので、体力的にしんどいんですけど、もっとくるったようなステップができなきゃいけないなと思いました」
―今シーズンに向けて。
白岩「まずはしっかり休んで、また来月のUSインターナショナルクラシックに向けて、次はアクセルも入れられるように頑張っていきたいです」
―次の試合に向けて修正したい点は?
白岩「ショートでは70点台を狙っていけるように細かい部分を少しずつ練習していきたいなと思います。フリーでは3+3までのジャンプは飛べないジャンプじゃないと思うので、そこの確率をもっと試合で上げていけるようにしたいと思います」
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―今年のフリーは密度が濃いですが、ここにアクセルを入れたらきついんじゃないでしょうか。
白岩「練習でアクセルをやったときは最後まで体力が持たずに途中でばててしまうんですが、そこは練習を重ねていくとどんどん体力がついていくのじゃないかなと思います」
フリーを終えた直後、白岩選手は横井選手から「しっかり休め」と声をかけられていました。最終順位が発表されると、横井選手、坂本選手、白岩選手はそれぞれ抱き合って、互いの健闘を称えあっていました。
表彰式では冠スポンサーである「元三フード」のゆるキャラ・げんちゃんを氷上に設置された表彰台へと笑いながら楽しそうにみんなで運んでいました。
<撮影・文 廉屋友美乃(かどやゆみの>