<ジュニア男子>

 ジュニア男子は将来が楽しみな選手が続々登場しました。54.12点でショート8位の中村俊介選手(関西大学KFSC)は見事、トリプルアクセルを成功。3+3がつけられませんでしたが、ショートの「アストゥリアス」の完成度は素晴らしい出来栄えでした。

 トリプルアクセルを着氷できたことについて、安堵の表情を浮かべながらも、

「アクセルはまず降りられて良かったです。ジャンプでバランス崩したりで、きちんとレベルが足りなかったのが悔しかったです」

 と胸の内はやはり悔しい様子。トリプルアクセルの完成度については、

「いつもは1日に一本飛べるかどうかですが、試合の方が飛べているかなと思います」

と冷静に我が身を振り返っていました。

 

 ショート2位で折り返した三宅星南選手(岡山理大附属高校)はトリプルアクセル、トリプルルッツ+トリプルトゥループ、トリプルループとジャンプを決め、ホッとした様子。点数は70.41でした。

—ショートを終えての感想は?

三宅「初めての披露で緊張したのですが、最後まで力を込めて滑ることができたので、良かったです」

—あまり緊張してないように見えたのですが。

三宅「緊張していたので、なかなかジャンプのリズムが掴めなかったんですが、一番滑走だったので、落ち着くためにも早い段階からジャンプをやめて、滑っていて、気持ちを落ち着けられたから良かったかなと思います」

—ショートの見所は?

三宅「ステップが面白いですし、原曲と違うアレンジが入っているので、これは自分で滑っていて楽しいです。最初の振りが結構、今まではジャンプにすぐ行っていたんですが、結構、踊る時間が長いということで、最後のところも自分の中では好きなところです」

—新シーズンに向けてどういうところを評価してもらいたいですか?

三宅「新しくシーズンが始まって4回転の種類を増やしたいのと、メンタルを強化していきたいです。4回転は今、東の子たちがたくさんの種類を飛んでいるので、僕も負けないようにちょっとずつ増やしていきたいです。4回転サルコウは飛べる回数は去年に比べたら、断然多くなって来たので、試合の中で飛べて、次のトゥループも飛べるようになりたいです」

—シーズンの始まりで70点台に乗せられましたが。

三宅「去年、なかなか70点台に乗せられなかったので、今回70点台乗せられて良かったです」

 

  三宅選手と同じ第5グループでひときわ存在感を示していたのが吉岡希選手(アクアピアスケーティングクラブ)でした。6分間練習でもスピード感あるスケーティングを披露し、目が離せません。

 そしてショートで滑った曲は『Art On Ice』。冒頭のトリプルアクセルはスピード、流れともあり、スピンも滑らか。コンビネーションのルッツはダブルになりましたが、セカンドにトリプルトゥループをしっかりつけ、60.21点でショート4位につけました。

 昨年に比べると、練習する時間も増え、アクセルが成功する確率も高くなったとか。

「ジャンプも練習でもしっかり、確率もアクセルとか上がっていて。スピンも練習する時間が上がっていて。ポジションも膝も綺麗に、その辺はよくなったところだと思います。ルッツやフリップが苦手で、そのへんは確率を上げてシーズンに持っていきたい」

と試合後、力強く語っていました。

 

 エレガントな雰囲気とシャープなスケーティング、柔らかな着氷に定評のある片伊勢武選手(神戸FSC)ですが、コンビネーションジャンプのトリプルフリップがシングルになるなどミスが響き14位スタート。しかしタキシード姿で映画「海の上のピアニスト」をまるで演奏するかのように演じ、観客を引き込みました。

 

 選手のコメントをとるミックスゾーンの横では出場を待つ選手たちの姿も垣間見られます。シニア男子に出場する山本草太選手(中京大学)は走り込んでアップをしていました。ジュニア男子の須本光希選手(関西大学)はベンチに座って、集中力を高めています。その姿はまるでボクサーのよう。リンクに向かう前の選手の孤独さを物語っていました。

 

 ジュニア男子ショート1位の須本選手は、この大会のみジュニアで参戦。前の週はシニアで、今後の大会はシニアでの参戦です。スピンにミスはありましたが、ジャンプは3本も美しく決まり、スピードが落ちないスケーティングは圧巻でした。

 さて、今回、なぜジュニア参戦だったのか。真相をショートの囲み取材で説明しました。

—プログラムを通じてハードそうだなと思いました。

須本「今まで自分がやって来たプログラムからいうと、しんどさも全然違います。振り付けしてもらった時よりしんどさは少ないので、まだ動き足りないかなと。去年まで飛べていたものが飛べなくなっていて、練習の前だったり、1日の空いている時間で走りこみは今年、入ってはじめました」

—シニア男子でもジュニア男子でもレベルが上がっていると思いますが、それに関しては?

須本「(次の)オリンピックと思っているので、それまでに今は絶対に届かないと思うんですが、4回転をしっかり飛べるものを増やして、プログラムにも試合にも入れられるようにしたい」

—明日への意気込み。

須本「順位や点数は気にせず、しっかりこれまで、先週試合がありましたが、それよりいい演技ができるように自分ができることをしっかりやろうと思います」

—今回、ジュニアですが、なぜジュニアに出ようかなと思った?

須本「先週飯塚杯がシニアであって、今回、サマーカップはジュニアで結構、不思議に思われた方も多いかと思いますが、国際大会はシニアに上がろうかと思うんですが、国内、世界ジュニアを考えると、全日本ジュニア…、シニアだと全日本一発勝負、ひと枠しかないけれど、でもジュニアだと2回チャンスがある。難しい状況ですが、今シーズン、課題がループとスピンがフライングシットとキャメルで。自分が一番苦手としているジャンプとスピンですけど点数ももうちょっと出したかったなという気持ちで。シニアの方が縛りなくできると今回わかったので、シニアに上がろうかなと思っています」

—少し前までは全日本ジュニアも視野に入れていた?

須本「はい、全日本ジュニアで優勝した年の次に全日本ジュニアで落ちてしまって。リベンジしたい気持ちもありますが、まず全日本に行かないと話にならないので、全日本で最終グループを目標に滑りたいです」

—今回、滑って、シニアで勝負しようと。今回がジュニアの最後の試合になると思いますが。

須本「明日はジュニアでやってこなかった4回転をやる予定なので、しっかりこの後、時間があればシニアの選手の試合を見て、勉強できるところは勉強して。明日は自分ができることをしっかりやりたいです」

—この時期までジュニアかシニアか悩んだのは世界ジュニアがあるから?

須本「世界ジュニアより、全日本ジュニアで逃げたくないという気持ちが、去年全日本ジュニアが終わった時からあって。今まで考えたんですが、今大会で素直にシニアに上がりますと言えるようになったかなと」

—ジュニア、シニア両方プログラムの準備したことで、色々とできるようしている?

須本「できるようにしていますし、世界ジュニアというのはしっかりできる年なので、自分が行った時はいい演技ができなかったので、世界ジュニアに行って、リベンジして、世界選手権も今の状態じゃ、目標と言えないので、目標にしてやっていきたいと思います」

 一つ一つのエレメンツにおいても高い技術を持っている須本選手ですから、世界選手権の出場を“目標とは言えない”ではなく、しっかりと狙って行って欲しいと思いました。

 

<シニア男子>

 シニア男子の注目は何と言っても友野一希選手(同志社大学)と山本草太選手(中京大学)です。友野選手のショートはフィリップ・ミルズさん振り付けのロイヤルバレエのコンテンポラリーを取り入れたハードなプログラム。加えて、4回転トゥループ、4回転サルコウ+トリプルトゥループと2種類の4回転ジャンプを組み込んでいます。冒頭4回転トゥループではステップアウト、4回転サルコウ+トリプルトゥループではセカンドのトリプルで回転不足を取られてしまいましたが、音楽との一体感はさすが。ショートの演技を終えた後、息を切らせながら、囲み取材の場にやってきました。


tomono

—点数を見ていかがですか?

友野「練習がまだまだ仕上がっていないので、しっかりサルコウ+トゥは回転が、トゥはわからないですが、しっかり決められて。アクセルの部分は全然、体力が足りてないなって感じて。4回転を2つ入れる難しさを感じましたし、初戦で、ここまで(かなり息が上がって、ハアハアと言いながら)持ってこれたのも(息を整えながら)トゥが印象よかったので、明日しっかり決められるよう、課題は残ったんですけど、点数はあまり意識せずに、とりあえず自分のやったことを練習して、明日に臨みたい」

—力強く、キレのあるプログラムですが、難しさは?

友野「フリーレッグの一つ一つの動きが、すごい明確に出るというか、目立つプログラムなので、まだまだ踊りこなせていないです。そこは今後、やるべきところで、しっかりジャンプを飛んだ上で、表現が入るように練習したいです」

—相当疲れているようですが。

友野「今までにない、4回転2本ってこんなに疲れるんだって感じで。サルコウ2本はフリーでやっていたんですが、種類が変わると難しさがあって。草太も入れてくると思うし、どういう風に試合に入れてくるかとか分析しながら、参考にしたいと思っています。とりあえず明日は集中したいと思います」

—シニア合宿の時に体づくりに向き合っているとおっしゃっていましたが、その効果は?

友野「体の安定感は増したと思いますし、その分コントロール仕切れていないというか、回転が回りすぎちゃったりとか、そういうミスが多いので。あとはうーん、作った分、きちんとコントロールできるようにしていかないとな、って思います。アクセルはもう少し軽く飛べると思うので。一つ一つのジャンプを自分の体と向き合いながら、やっていきたいと思います」

—明日のフリーは?

友野「もう思い切って、まだまだ仕上がりは良くないので、とりあえず現時点でどれだけできるのかを明日のフリーで自分を試したいと思います」

 

ここで私、もう少し体力面の強化について聞きたく、質問をしました。

—体力面の強化で具体的にやっていることは?

友野「まだ、曲かけができていなくて、海外試合の前だと僕を優先して練習することができるんですが、ちょっとサマーカップはみんな出るし、リンクでも平等なのでなかなか曲かけ練習ができない状態が続いていたので、まだまだ曲のプログラムを滑り足りてないと思うので。次はロンバルディア杯に向けて、まだ明日フリーもありますが、課題としてして滑り込むことが重要かな、あの、ちょっと見ていいですか」


 友野選手、滑走する山本草太選手の演技が始まる直前で、相当気になっていた模様。山本選手の滑りを参考にしたいと言っていましたから、急いでリンクへと向かって行きました。

 

 山本選手のショートは映画『エデンの東』です。手足が長さを生かしたスケーティングは壮大で、見るものを圧倒します。6分間練習では見事に決めていた4回転トゥループ+トリプルトゥループが2回転+2回転になるミス。冒頭の4回転サルコウはなんとか耐えましたが、トリプルアクセルは見事に決め、67.50点で2位に。
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—シーズン初戦のショート終わっていかがですか?

山本「2本目のジャンプのトゥ+トゥを失敗してしまって。すぐに気持ちを切り替えられず、一瞬空白の時間が…。頭が真っ白になってしまって。そこから整理がつかなくて、次のスピンに影響が出てしまいました。反省するところが多いので、明日のフリーで挽回するように頑張ります」

—コンビネーションの最初は4回転ですよね。

山本「はい。最初がダブルになってしまって、次、トリプルをつけるのがダブルになってしまって。2回転になって0点で。得点をかなり稼げなかったなと思います」

—6分間練習の頃から4回転ジャンプは調子良さそうでしたが、ここ最近の出来としては?

山本「だいぶ、ジャンプの練習を増やして。曲で入れるように練習は積んで来られたんですが、こうやってミスが出てしまったので、しっかりフリーでミスが出ないように引きずらないように頑張りたいです」

—4回転2本、しかも1本はコンビネーションですが、今までで最高難度の構成じゃないですか?

山本「ショートは全部揃えることはできたんですが、今回は失敗してしまっていますし、フリーになると回数も増えてくるので、しっかりとフリーも頑張りたいと思います」

—サマーカップはどういう位置付けですか?

山本「オフシーズン、合宿を重ね、だいぶん練習も積んでこられましたし(少し間を開けて)・・・。こうやってミスが出てしまって、練習不足かなと思うので、まずフリーに向けて頑張りたいと思います」

ーフリーに向けて意気込みを。

山本「出るからには優勝目指してきているので、明日のフリーで挽回して頑張ります」

—試合での4回転サルコウは久しぶり?

山本「一応、初めてなんで。まあ、手をついただけ、クリーンではなかったと思うので、明日のフリー頑張ります」

ー難しいジャンプと表現、両方を追いかけていると思いますが、その割合は自分の中でどうおいている?

山本「ジャンプを終えるまではジャンプに集中しやすい軌道だったり、振り付けだったり、スケーティングにして頂いているので、それが終わった後のステップシークエンスで見せるようなプログラムかなと思うので。最初はエレメンツを後半は表現の面を全面的に出せるプログラムにしたいです」

 2日目もハイレベルな戦いが繰り広げられ、日本のフィギュアスケートの底力を感じました。

ここでお詫び。実は途中、カメラ機材のトラブルにあってしまいました。ジュニア男子、シニア男子がほとんど撮影できず、申し訳ない…。3日目のフリーはしっかりとメンテナンスをして、たくさん写真を撮りましたので、次回は写真とともに選手の活躍を紹介します<撮影・文 廉屋友美乃(かどやゆみの)>