第1グループに登場したのは今季からシニアデビューの横井ゆは菜選手(中京大学)。ショートはドラマ「黒い十人の女」。妻がいながら複数の女性と関係を持つ男に対し、妻と愛人が復讐をするストーリーに挑戦です。黒い衣装に復讐を企てる女の強い目力。ドラマを見ているような感覚を覚えます。

 トリプルフリップ+トリプルトゥループを見事に決めた後、ダブルアクセルではオーバーターン。そのあとはくるくると軽快なツイズルを入れていました。

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 ダブルアクセルのミスは本人が演技後の囲み取材で次のように明かしています。

横井「今回、ダブルアクセルでミスをしてしまった。あれを飛べていたら、もう少し行けていたなと。そこは悔しい部分ではあります。練習で絶好調というわけではなかったので、それでも落ち着いて練習してきたのを信じて、試合に挑めたのは良かったと思います」

—ミスがあっても点数が伸びた理由は?

横井「わからないんですが、この曲は自分で選んだんですが、やっていてすごく楽しくて。自分も楽しんで、お客さんも楽しんでもらえるような演技がしやすいのが良かった」

—お客さんの反応は良かったですが、ご自身は?

横井「アクセル失敗してしまった分、悪女なのにめっちゃ臆病な感じに(笑い)なっちゃったので、失敗しても失敗してないわよ、ぐらいの感じを出せれば。ミスをしても点数出せるようにというのが先生の指導なので。そういう風にしたいです」

—今回のサマカはどういうことを目標にしたい?

横井「この大会は年々、関東の選手も出ていて、レベルアップしている。全日本に向けて、こういうたくさんの強豪の選手がいる中で試合するのは良い経験になる。そこで結果を出せば自信になるし、よくなかったら課題も見つかると思うので」

—フリーに向けての意気込みは。

横井「去年のジュニアのオペラ座とは違うというのを出だしからわかっていただけるようにやりたいと思います」

—ダブルアクセルの後はツイズルを入れたのかと思うぐらい余裕だったのかなと思うのですが。

横井「失敗したら、後はごまかすしかないので。と言っても私はツイズルが下手なので、逆にマイナスをもらうかもしれないという感じだったのですが。先生から“苦肉の策だね”みたいな感じで言われて(笑い)。簡単なジャンプで失敗ほどもったいないことはないので。加点の頂けるジャンプなので、そこは集中できなかったかもしれないので、そこは明日、集中してやりたいと思います」

—あのツイズルはパッと思いついた?

横井「私あるあるなんですが、オーバーターンした瞬間、もう一回くるくる回る(笑い)。去年の全日本のループもそうだったと思いますが。ごまかすっていうのも大事だと思います。それによってマイナスされる幅も違うので。失敗した時にどういうリカバリーをするかも今後の課題にしていきたいと思います」

—だいぶ、成熟というかこなれてきたのかなという感じですが。(ショート初お披露目から)1ヶ月経ってどうですか?

横井「ちょっと前、2〜3日前にジャンプの調子が悪かった時に先生がプログラムをしっかりやろうって言って、細かいところまで言ってくださって。それが100%できたわけではないですが、もっと試合を重ねるごとにうわーと思われるような女性になれるようにしたいです」

—表現の面で気をつけていることは?

横井「普通に表現もそうですが、私はどうしてもフリーレッグが綺麗に処理できないので、そこをうるさく先生に言われているので。まだ完璧ではないので、コミカルさや独特さの中にフィギュアスケートである以上、綺麗な部分も入れないとただの雑な演技になってしまうので。そこをしっかり練習していこうと思いました

 十人の女性をそれぞれ演じ分ける難しいプログラム。シニアに上がって、円熟味がました横井選手の演技に会場中が酔いしれていました。67.01点でショート2位。

 

 第2グループでは山下真瑚選手(中京大中京高校)がレッドの衣装で現れました。曲は去年から継続で「Una Voce Poco Fa」。キュートな雰囲気を持つ彼女にぴったりのプログラムです。
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 しかし冒頭のジャンプはトリプルサルコウ+トリプルトゥループ。トリプルルッツ+トルプルトゥループを軽々と決める彼女にしては難度を下げたプログラムです。

 どうやらこの時、足を痛めていたそう。

—演技を終えて。

山下「サルコウ+トゥであれだけフラフラになっていて、点数を出してもらえたのは良かったかなと思います」

—ジャンプは難度を下げたイメージだったのですが。

山下「足の調子がまだ良くならなくて。この試合はサルコウ+トゥとか。ルッツはやらずにレベルを落としました」

—明日も同じ?

山下「明日はダブルのフリップは入れるんですが、後はループまで」

—ショートのプログラムは去年から引き続きですが、完成度は?

山下「やっぱり足を怪我していて。何回も通したりすることができない状態なので、なんとも言えないんですけど、これからはもっと完成度を上げていけたらいいなと思います」

—明日のフリーはどんな滑りがしたいですか?

山下「明日も難度は低いんですけど、ジャンプができないなりに自分ができることを出し切れたらいいなと思います」

—足が痛いなりにサマーカップに出場した意図は?

山下「やっぱり自分の中では1戦目が海外試合じゃなくて、一回、国内で滑ってから海外にいきたいと思ったのが理由です」

—目標は?

山下「足の痛みを治すことが一番だと思います」

—シニア2年目。お姉さんたちの中で戦うのは慣れてきましたか?

山下「だいぶ慣れてきて、楽しくなっているので、いいことかなと思います」

—足の怪我はいつからでどんな経過をたどりましたか?

山下「5月ぐらいから、両足の甲を痛めました」

—ジャンプで?

山下「靴を変えたこととかいろんなことが重なってです」

—いつから通しの練習できるようになりました?

山下「ジャンプを入れずにだったら通してできたんですけど、ジャンプ入れてだと最近です」

—一週間とか?

山下「もう少し前ですけど、そんなにはできていないです」

—合宿の時に病院にかかっても、怪我の具体的にわからないとおっしゃていましたが、その後も同じ?

山下「はい」

—両足はテーピングしている?どういう状態で出ている?

山下「テーピングも痛み止めも試したんですが、全然効果がわからないので。できるだけ痛くないことをしていろんなことをしています」

 それでもスピンやステップは軽やか。61.12点でショート3位につけました。

 

 ショート1位で折り返したのは白岩優奈選手(関西大学KFSC)。トリプルルッツ+トリプルトゥループ、ダブルアクセル、トリプルループ共に流れがあり、ノーミス。バレリーナを思わせるような白い衣装と優雅な演技で点数は68.52
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しかし白岩選手も本調子ではなく、体調を崩していたそう。

 

—プログラム終えてどうですか?

白岩「シーズンのお披露目の場で、去年のシーズンベストは超えられるようになってきたので、そこは良かった思うし、これから練習を続けていくといいのかなと思います」

—ループの調子も良さそうでしたが。

白岩「えっと2日前に風邪をひいてしまって。滑ることができなくて、今、ちょっと滑った時もボロボロで。どうしようかなと思ったんですが、特に難しいジャンプが入っているわけでもなく、去年、その前から継続しているので、特に考えずに出ようかなと思っています」

—ショートの見所は。

白岩「去年のショートに比べると静かな曲になっていて、去年と違いを出したい」

ー昨シーズン、トリプルアクセルを頑張りたいということでしたが、その調子は?

白岩「調子がいいときは調子が良くて。まだ、きれいには飛べてないですけど、もうちょっとでクリーンになるので、遅くてもグランプリシリーズには間に合うぐらいの調子には持っていきたい」

—明日のフリーは?

白岩「多分、まだ決めてないですけど、練習ではアクセルをやっているので」

—明日の意気込みを。

白岩「フリーは重いテーマの曲なので、ショートとの違いを評価してもらえるようにしたいです」

—どんなテーマで。

白岩「死に関するテーマの映画なんですが、まだ死を経験したことないというか、身近に経験をしたことがないので、難しいんじゃないかということで。囚われている自分を解放したいメッセージ、テーマで滑ります」

 少し息切れながらも、満面の笑みで取材に応じた白岩選手。バレエやダンスを普段から取り入れることで表現力もうんと増し、肩の力も抜けた様子でした。

 

 シニア女子で大きな注目を寄せたのは2018年全日本チャンピオンの坂本花織選手(シスメックス)。スピードのある滑りは圧巻です。トリプルフリップ+トリプルトゥループはなんとか堪え、ダブルアクセルは決めたものの、トリプルループで転倒。58.62点で6位。

 

 

kaori—滑ってみての感想は。

坂本「今シーズン初めての試合で、アイスショーでもやってきたんですが、練習ではやっていたミスがそのまま出てしまったので。なんとも言えないです」

—一番悔しいポイントは? 練習の中でも課題が見えた?

坂本「久々の緊張感で足も震えながらやったんですが、前は打ち勝てるような練習をしていたので。その練習ができなかったので、今回の結果だと思う」

—本番前に助走を意識しているのかなと思ったのですが。

坂本「助走というかジャンプの入り方次第で、決まってくるので。入り方のチェックを確認していました」

—得意なジャンプの中で課題にしていることは?

坂本「ジャンプ3つとも最初の入り方がちょっとでもずれてしまうとミスに繋がってしまうので。そこは気をつけて、また元の自分のジャンプに戻したいです」

—今回、一番練習してきたことは?

坂本「いつもこういうミスが多いので、ステップ、スピンのレベルは落とさないようにというのは先生方と練習してきたので。そこが落ちていなければいいなと思います」

—明日のフリーへのポイントは。

坂本「今日は集中しきれてなかったので、明日は最善を尽くせるようにしたいです」

—アイスショーでは何度も滑っていたと思いますが、実際やってみて、お客さんの反応は?

坂本「アイスショーはリンクも小さいですし、スピードを制限しながら、ぶっ飛ばして行かないといけないので。アイスショーならできたんですが、お客さんの位置も上の方にあるので。そうなるとアイスショーとは違う環境で滑ることになるので。アイスショーでできたから大丈夫という心の余裕というか気が緩んでしまったと思うんで。そこは直していきたいです」

—今年の仕上がりは?

坂本「去年よりはアイスショーでもノーミスで、できたり。最後の『THE ICE』でも転けたりとかはなかったので、そのモチベーションのままで行こうと思ったんですが。試合とアイスショーの緊張感は違ったので悔しいです」

—練習でもミスがあった?

坂本「3+3だったらフリップがすごい適当に飛んでしまってトゥループにつながるような降り方ができなかったり。今回はなんとか耐えられたんですが、いつもだったらトゥループで転けたりとか。ループは自分ではしてなかったので、予期せぬ失敗でした。失敗は練習からしているので、練習以上のものは出なかったんだなと。

 去年はスローな曲で息を整えながらできたんですが、今年の曲は息抜くところがないので、きついんですが、ちょっと試合終わったら練習します」

—明日はアクセルに挑戦する?

坂本「やめると思います」

 まだまだシーズンは始まったばかり。坂本選手のダイナミックなジャンプとプログラムの完成度が高まっていくのを期待しましょう。

 

 大会が行われる数週間前から日本列島は猛暑に包まれていました。外は30度以上の猛暑。ですが、リンクの中はダウンジャケットが必要なほど冷えています。外と中との寒暖差で体調を崩す選手も少なからずいました。

 樋口新葉選手(明治大学/ノエビア)は冒頭のダブルアクセルを決めましたが、トリプルがダブルルッツに、トリプルフリップにコンビネーションがつけられないミスがあり、48.9215位。いつもの彼女のスピード感ある演技ではなく、少し元気がなさそうでした。

—ショートを振り返って。

樋口「先週(飯塚杯)とあまり変わってない感じがしたのと自分自身、滑っていて息ができなくて。すごい辛かったなと思います」

—一週間はどんな練習を?

樋口「とりあえずミスをしないようにしていたんですが、結構、力が入っている感じなので、それを直していきたいなと思います」

ーお客さんのリアクションは見た?

樋口「あまり考えられない感じでした」

—これからどんな風に練習していきたい?

樋口「まだ2戦目なので。国際試合まで1ヶ月しかないので、焦らずにできることを増やしていきたい」

ー作り上げたプログラムはどういう風に見せたいですか?

樋口「ステップの部分を一番練習してきたので、そこをとにかくレベルを落とさないようにしたい」

—体調が良くない?

樋口「あまり夏に体調を崩すことはなかったので、結構、試合もあるのにきついなっていうのはあります」

—ほとんどダンスのようなプログラムだと思うんですが、体力面は?

樋口「ショートもフリーもきついのでジャンプを入れてやったら、バテバテになるプログラムなので、そこをもう少し楽に滑れるところは楽に滑れるようにしたい」

 

最後に「今日は滑りきれるか不安だった」というほど、体調面に不安を抱えていたようです。
 翌日のフリーは残念ながら棄権してしまいましたが、ショートのステップシークエンスはレベル4。体調を整え、魅力溢れる新葉ワールドを今シーズン期待しましょう。 
 男子のレポートもつづけます。
<撮影・文 廉屋友美乃(かどやゆみの)>


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